哲學熟議22 / 哲樂遊戯10
(日府展「先端表現部門」創設記念シンポジウム)
生成AIは創意の終焉をもたらすか?
転倒戦略STREAMMが切り開く新しい表現の世界

2023年、オープンAIによる「GPT4」の公開以降、生成AIは文書テキストだけでなく、静止画イメージや音声動画、音楽など、さまざまなコンテンツの「生成」が可能であると喧伝されるようになりましたが・・・本当なのでしょうか?
確かに、カットの発注といった小さな案件で、仕事を失ったクリエータは存在します。しかし、芸術制作はもとより、コミックスでもアニメーションでも、プロフェッショナルの最前線では、いまだAIアシスタントの役割は限定的で、人間の創意にとって代わる存在にはなっていません。
逆に、生成AIの不完全な性質を利用して、意図しない偶然性を導入する「ポスト・ダダ」「ポスト構造主義」的な創意の擾乱要素として活用することを「先端表現部門」芸術監督の伊東 乾と感性工学者でAI絵師の石原茂和は提案しています。
伊東は作曲家・演奏家として、ジョン・ケージの遺作OCEANの没後初演への参加、一柳 慧、磯崎 新などとの取り組みなど、ネオ・ダダ、ポスト・ケージの文脈で先鋭的な活動を続けてきました。
同時に1999年以降伊東は、東京大学で研究室を主催し、物性物理、脳認知など複数の分野で基礎研究を進めつつ、その成果を正確に音楽に反映させるとともに、これらを次世代育成の教育システムとして体系化するプロジェクトにも一貫して取り組んできました。
2015年、石原、伊東らがミュンヘン工科大学の Klaus Meinzer, Christoph Luetgeらと確立した STREAMM の考え方は。2010年代後半に著しく進展した機械学習の成果も取り入れて、AI STREAMMとして体系化され、幼稚園児から小中高校、大学・大学院生に至る一貫した教育メソードとして体系化されつつあります。
かつて第一次大戦後、ドイツ・ヴァイマールに創設されたヴァルター・グロピウス、ワシリー・カンディンスキー、パウル・クレーらによるバウハウスは、ナチス政権の成立で閉鎖されるまで、20世紀前半のさまざまな創作視聴を糾合する重要な役割を果たしました。
第二次世界大戦後、米国ノースカロライナ州のブラックマウンテン・カレッジで展開されたバクミンスター・フラー、ジョン・ケージらのスクールからはロバート・ラウシェンバーグらが輩出、これらとは比較にならない小さな規模ですが、東京でも瀧口修造が指導する実験工房は武満 徹、湯浅譲二、北代省三、駒井哲郎らが出、20世紀後半の思潮を形成しました。
翻って20世紀末、マサチューセッツ工科大学に創設されたメディア・ラボは、マーヴィン・ミンスキーの業績と思想に取材したものの、特段の思潮を形成することなく実質的な終焉を迎えました。ミンスキーらのパーセプトロンを源流の一つにもつ生成AIが急速な普及を見せる2020年代、何らの表現思想を展開、発信することはありませんでした。
わたしたちは甘利俊一、塚田稔、津田一郎など、ヒト脳のメカニズムとダイナミクスに立脚するシステムに立脚しつつ、パウル・クレーやジョン・ケージの藝術思潮を発展的に超克する新しい表現原理AI- STREAMMを改めてここに宣言し、人工知能以降の創意と制作のダイナミズムを、実演を含むワークショップ形式で平易にご紹介します。
日時 2025年5月24日(土) 10時 開場 10時15分 開始
場所 東京都立美術館 1階講堂
入場無料 ただし ウエブでの事前登録が必要
https://peatix.com/event/4370808/view
(定員に達した場合は インターネット中継)
タイムライン
基調講演1「AIの奴隷にならないために・・・STREAMMの思想と実践」
伊東 乾 作曲家=指揮者 先端表現部門芸術監督
基調講演2「焼け跡から『文化』への信念 弘田龍太郎・藤田復生の教えない幼児教育」
藤田厚生 作曲家・ゆかり文化幼稚園理事長
パネルトーク
藤田厚生 + 岡村淳 + 石原茂和 + 日府展先端表現部門関係者
LIVE STREAMM
岡村 淳(ヴィデオ:ドキュメンタリー映像作家 + 活弁) 「里山の 冬の華」
伊東 乾(作曲=指揮)+及川悠介(ヴァイオリン)+永田菫(ヴィオラ)+・・・